高尾山に忍び寄る危機 元禄ブナ高尾通信

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高尾山 元禄ブナの危機

 高尾山の代表的な樹木といえば、ブナ。「緑のダム」と呼ばれるブナ林は、豊富な水を地中に蓄えて、人と自然が共生する豊かな山を作ります。ブナの仲間は世界に10種ありますが、外国のブナは森林を形成する程のものは稀で、白神山地のブナが世界遺産に指定されたのは当然です。元来ブナは寒冷を好み、多雪地や寒冷地に適した樹種です。
 そのため雪の少ない太平洋側のブナは純林を造るほどの個体数が無く、後継ぎの若木も少ないのが現状です。このようにブナは冷温帯を代表する樹種で、高尾山周辺の山には全く存在していません。高尾山の標高や気温では本来的に育ちようがありません。

 ところが、高尾山では標高400m台から山頂付近には、樹齢300年を越えるブナが生育しており、現在90本ほどが確認されているのです。一番大きなブナは元禄時代のものであり直径1mをこえています。
 それ以外のブナも江戸時代のものとおもわれます。どうしてブナは生息できたのでしょうか?
 江戸時代中期は世界的に寒冷だったことが証明されており、小氷河期little ice ageと名づけられています。高尾山のブナは、いまから2、300年前が、まさに寒冷期であったことを示す貴重な証拠でもあるわけです。江戸時代の小氷河期に、高尾山まで南下して自生したブナが、その後の天候温暖化に関わらず、そのまま残ったものであり、きわめて珍しい現象といえるわけです。

 このように、高尾山にはいくつかの大きなブナの木がありますが、おもしろいことにそれぞれ名前がついられているようです。「高尾山の自然をまもる市民の会」のYさんがつけられたのが、そのまま親しまれてきているようですが、ケーブル高尾山駅前にあるのが「駅前ブナ」。
 ケーブルカー高尾山駅近くの北側斜面4号路の途中にあるのが最も古く、江戸時代の元禄時代からあるのではないかといわれるため、この年号にちなんで名付けられた「元禄ブナ」。根元の周囲が約3・4メートル、高さ20メートル以上はある巨木です。そして、いろはの森コースにあるのが最も姿が美しいということから「美人ブナ」だそうです。

 ところが、この樹齢約300年とされる「元禄ブナ」が枯れ始めているというのです。高尾山周辺の住民らが首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の建設差し止めを求めた高尾山天狗裁判では、ムササビ、オオタカ、高尾山、八王子城跡とともに自然物5原告の一つとして名を連ねた古木です。
 高尾山の象徴として、今も原告住民らにとって心のよりどころだといいます。(圏央道の)トンネル工事の影響とも言えないようで、樹齢からいって寿命かもしれないということですが、とても残念です。

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