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「山歩き 初歩の初歩」は、山歩き初心者のための総合情報サイトです。

楽しい山歩きを提案します

山の怖さ




山のトラブル(事故発生)
山で迷ったら
山で遭難したら
野生動物と遭遇したら
もしものために


 遭難事故があると事故の当事者は、ほとんどといっていいように『自分たちには経験がある』と言ってますが、そんな方に限って、専門家から見ると素人の域を出ていないといえます。
 趣味で始めた人と、経験を積んできた人との決定的な違いは、『自然の怖さを知っているかどうか』にあるのです。

 例えば、知らない場所でも地図が読めるかどうか。暗くなったり、寒くなったらどうするのか。天気は読めるか。経験があれば、事前の用意も含め、適切に対処していけるのです。
 しかし、登山ツアーに何度か参加したくらいでは、果たして判断力をもった経験を積んだとは言えないでしょう。


山のトラブルと対応

 中高年のハイキングでは、できればグループで行動するのが望ましいといえます。
 その理由は、ふだん運動していない中高年では、何か事故が起こる確率が高いからです。
 誰かが助けてくれなければ、それこそ身動きできないことも起こってしまうのが中高年の登山・ハイキングなのです。
 中でも、疲れてくると石を踏み外しての捻挫がよく起こります。
 また、下山途中、ほとんど平坦なところまで降りてきてから、疲れと気の緩みで、なんでもない場所でアキレス腱を切るような事故も多いものです。

捻挫や骨折

 グループでハイキングする場合、全員がもつ必要はありませんが、誰かのリュックには必ず炎症を冷やすスプレーとテープ、包帯を詰めるようにしましょう。

 足首の捻挫の場合はスプレーを吹きかけ、テープで固定し、包帯でやや強めに巻くだけでも楽になります。
 テーピングで足首を固定し、同行者が肩を貸して歩きます。 
 手足の場合、近くにある手ごろな木を両脇に添え、タオルやバンドでしっかり固定をします。
 時間が経つと骨折した部位が脹れてきますので、露を含んだ葉や笹などで冷やすようにします。
 頭部や胸部を強打した場合、打撲したと思われる部位をタオルやビニール袋をつなぎ合わせ包帯替わりに回して固定します。

 アキレス腱切断では、普通なら靴をぬがせ、つま先を伸ばした状態で固定して医者に運ぶのですが、山道ではそうはいきません。
 意外に腫れませんし、しばらく待てば痛みも収まりますので、歩けるならスプレーで冷やしながら歩きます。
 そんな事故でも自力で歩くことが原則で、木の枝を杖代わりにして痛くても自分で歩くようにしてください。
 同伴者が無理をして背負ったりすれば共倒れになりかねません。しかし、たとえ何とか帰ってきても、翌日には医師に見てもらうことをおすすめします。
 アキレス腱は痛みが消えても、手術できちんとつなげるなどの処置をしないと後で大変なことになります。

転落・滑落

 登山というよりも「山歩き」という表現が相応しいツアーは、中高年齢層を中心に、ブームといえるほど盛んです。
 当然、それに伴って「山」の遭難、事故のニュースは後を絶ちません。
 それも本格的な登山行での事故というより、気軽なハイキング程度の山歩き中の、気候の変化に対応できなかった事故や滑落・転落による事故が目立ちます。 
 2002年中の山岳遭難の発生件数は1,348件を数え、遭難者数は1,631人で、そのうち1,389人が救助されましたが、218遺体が収容されるという結果でした。(警察庁資料)

 このように登山道からの転落・滑落事故が頻繁に起こっていますが、それも険しい登山道で起こっているとは限りません。
 むしろ一見なんでもないような場所で起こっているのです。夏山では、転倒、滑落による事故が本当に多いのです。

 樹林帯なら樹木にぶつかりケガをするだけですむかもしれません。しかしガレ場や岩場で転倒、滑落すると、長い距離を落ちて大きな事故に結びつきやすいのです。
 幸い一命をとりとめても、危険な場所に投げ出されることが多く、救出するのは困難な作業になる。
 また、救助を待つ間に症状が悪化して遭難死することもあるのです。  

 転倒、転滑落のほとんどが下りで起こっているので、危険箇所では歩幅を小さくとり、登山道周辺の地形をしっかり観察して歩くことです。
 また、たとえ足場がしっかりしている一般コースでも、踏み外せば何百メートルも下の谷底に落ちるような道はいたるところにあります。
 そのような場所では、絶対に転倒したり足場を踏み外したり、落石を起こしたりしてはならない。また、滑落が危険な場所では休憩しないことも大事です。 
 滑落は難所や危険箇所よりも、むしろ技術的に容易な場所で起こりやすいようだ。つまりよく注意しているうちはいいが、これくらいならやさしいとたかをくくっているうちに、わずかな気の緩みがスリップを招くのです。

落石

 長雨や台風の後に落石は起こりやすく、万が一岩が落ちてくるのを見つけたら大声で周囲の人に知らせます。
 林道や沢沿いの道で、岸壁・ガレ・草付斜面などの下を横切るケースで落石が発生しています。

 これは上部に注意を払いながらスピーディーに通過すればよい。
 落石があっても、よほど運が悪くないかぎり当たることが少ないだろう。
 もちろん、このような斜面の下で休憩してはいけません。

クマに遭遇

 日本に棲む野生のクマはヒグマとツキノワグマの2種類だけです。
 ヒグマは北海道、本州にはツキノワグマが棲息にしています。よく昔から言われている「登山中にクマと出合ったら、死んだふり」をしたり、背中を見せて逃げたりすることは逆効果です。
 慌てず、騒がず、クマの目を凝視したまま少しずつ後ずさりしてクマが立ち去るのを待つことです。
 最悪の事態になった場合は、前屈にしゃがんで首の後を両手で組んで守る。
 しかし、実は、クマとても人間と突然出合ったら恐いはずです。
 人があまり歩かない山では熊よけ鈴をつけたり、携帯ラジオをつけたりして、人間の存在をクマに知らせるのも安全策の一つといえます。

スズメバチの恐怖

 攻撃性が強く、毒性は日本のハチの中で最も強いので、人によっては刺されて死亡するケースもあります。刺されたら水でよく洗い、すぐに病院へ行きます。
 スズメバチに刺されて死亡する人は、毎年3,40人程度出ており、そういう意味ではまむしより危険な存在です。
 また巣がわかれば近寄らなければいいのですが、オオスズメバチは、地中に巣を作るのでわかりにくいのです。人が気付かずに巣に近寄ると、見張りのスズメバチが接近してきます。
 大声を出したり、叫んだり、手で払ったりすると、スズメバチは興奮して警報フェロモンも出し、次々に仲間の蜂が襲ってくることになります。
 刺激しないように静かに速やかにその場を離れることが最良、唯一の策です。

 また野山を歩くときは、白い服、帽子をかぶってください。黒い服はスズメバチを興奮させるのです。肌を露出せぬように、長ズボンやスラックス、長袖を着用してください。
 また、刺されたら傷口を水で洗い冷やすこと。抵スタミン軟膏やステロイド軟膏を塗ってください。アンモニアが効くというのは俗説で効果はありません。
 ましてやおしっこをつけるなんて馬鹿なまねは絶対に止めてください。
 また過去に蜂に刺されてショック症状が出た方は、この季節は蜂のいるところに近づかない方が得策です。

まむしと遭遇

 まむしをはじめとする毒蛇は、石や朽ち木の下、穴の中に潜んでいることが多いので、特に子供といく場合、昆虫採集などで、このような場所に手足をいきなり入れるのは非常に危険です。
 蛇を見つけてもあわてず、足で踏んだりつかんだりしないで蛇が逃げ去るまで待つようにする(蛇の攻撃できる範囲は限られており、標準的なまむしの場合約50cm)。また、死んでいるように見える蛇であっても、いきなり手でつかむことはしてはいけない。生きている場合はもちろん、死ぬ直前の状態であっても反射で噛みつくことがあるからです。

 毒の広がりを防ぐ意味では、噛まれた箇所10〜20cm心臓よりの部分に止血帯を巻くといいようです。ただこれは、止血ではないので、あまりきつく締めすぎないようにし、静脈が軽く浮き出る程度ににとどめておきます。
 傷口を洗い、口を当てて毒液を吸い取り、飲み込まないようにすぐに吐き出す。これを何回か繰り返し、安静を保ちながら医療機関へ運ぶ。
 すぐに下山して近くの病院にかかれば大丈夫です。まむしの毒はまわりが遅いのですぐに死亡するようなことはありません。
 医療機関まで自力で歩かなければならない場合でも走ったりせず、ゆっくり歩いて移動することが大事です。

 もちろんのことですが、吸い出した後は十分にうがいをして飲み込んだりしないように注意。
 また、素人判断で、ナイフで切開は、治療法としては有効だが、何の蛇に噛まれたのか判別できなくなるおそれがあります。
 本当にまむしだったのか、無毒の蛇だったのか、判断できないならやめましょう。

山ヒル

 山にハイキングに出かけ、知らないうちに吸血されることがあります。靴下が血でベトベトになってびっくりすることがあります。特に梅雨時から夏にかけ、雨後のじめじめした樹林帯を歩いていると山ヒルにやられることがあります。

 首筋や足、時にはお腹に喰いついているときがあります。
 そんな時は無理にひっぱるとヒルの口が皮膚に残って出血がひどくなったり、痒みが続いて汚い跡が残ったりするので、腹いっぱい血を吸わせて自然に落ちるまで待つか塩を持参して振りかけるかしましょう。

 吸血された場合、止血剤は必要はなく、傷口から血を押し出すようにして、ヒルが吸血する際に出すヒルジンなどの体液を洗い流してしまえば大丈夫です。
 最後にレスタミンコーワ軟膏などの抗ヒスタミン剤(虫刺され薬やかゆみどめ)を塗布しておけばよいでしょう。命にかかわることはありません。一度は出血がとまっても、夜に風呂に入ると血液が流れ出てくる場合がありますので注意して下さい。

日射病

 暑い環境下で長時間休みなく活動した結果、次第に発汗量が低下しついには発汗、体温調節機能が停止してしまうのが日射病(熱射病ともいう)である。
 急激に症状が起こり、頭痛・めまい・吐き気・疲労感に襲われる。顔面が紅潮して、皮膚はかさかさに乾燥し、発汗は全く止まる。体温は40.5℃以上になる。  
 日射病は命に関わる重い病気なので、処置は速やかに行わなくてはならない。
 患者を風通しのよい涼しい場所に移し、衣服を緩め休ませる。電解質を含む飲み物を与える。

熱射病

 高温下で長時間行動して大量の汗をかいたのに、十分な水分補給をしなかったために起こる脱水性のショック症状。脱力感・立ちくらみ・頻脈・頭痛・めまいなどの症状が現れ、顔が蒼白になり、肌は汗でベトベトになって冷たく感じることが多い。 
 熱疲労になったら患者を風通しのよい涼しい場所に運び、汗でぬれた衣服を着替えさせて、十分休ませる。意識があれば、薄い食塩を含んだ飲み物を与えるとよい。


熱射病


 高温下で長時間行動して大量の汗をかいたのに、十分な水分補給をしなかったために起こる脱水性のショック症状。脱力感・立ちくらみ・頻脈・頭痛・めまいなどの症状が現れ、顔が蒼白になり、肌は汗でベトベトになって冷たく感じることが多い。 
 熱疲労になったら患者を風通しのよい涼しい場所に運び、汗でぬれた衣服を着替えさせて、十分休ませる。意識があれば、薄い食塩を含んだ飲み物を与えるとよい。

雷に遭遇

 雷には、夏に熱によって急激な上昇気流が起こり雷雲が発生する「熱雷」と、寒冷前線の全面で暖気の下に重い寒気がもぐり込む事により急激な上昇気流が生じて雷雲が発生する「界雷」があります。

「まず姿勢を低くせよ」

 雷は周辺で一番高いところに落ちます。相手が電気の「良導体」であろうがなかろうが関係ないのです。
 昔は雷がなったらピッケルなどの金属製の物は体から遠ざけろと言われてきましたが、雷ぐらいの高電圧になると、とにかく一番近いところへ放電するのだそうです。
 従って、雷雲の中に入ったと思ったら、少しでも低い位置へ移動するか、余裕の無い時は身をかがめるとか横になるとかして、とにかく自分の体を周囲より低くすることです。

「高い木などからは5メートル以上離れろ」

 高い木には落雷しやすく、その木の下の5メートル以内にいると感電する恐れがあるのだそうです。