高尾山の雑学・豆知識
高尾山火渡り祭参加ガイド
真言宗智山派の関東三大本山のひとつ、高尾山薬王院、天平16(744)年の創建と伝えられるこの古刹では、毎年3月の第二日曜日に高尾山麓の自動車祈祷殿広場にて火渡り祭が行われます。
都心からのアクセスもいい八王子市にある高尾山は、ケーブルカーを使えば山頂まで気軽に登れることもあって、一年を通じて多くの人々が訪れます。
また、高尾山はそもそも修験道の霊山であり、現在も古くからの信仰の痕跡を見ることができます。
そんな霊山としての高尾山の姿を現代に伝えるのが、高尾山薬王院で毎年行われる「火渡り祭」です。
薬王院で修行をしている山伏の荒行が「水の行」「火の行」と二つあるのですが、そのうちの「火の行」が公開された形になっているのがこの「火渡り祭」です。
薬王院の説明によれば、火渡り祭は、高尾山御本尊飯縄大権現の衆生救済の誓願に基づき、真言密教加持の極致である御護摩(浄火により災厄を祓う火の行)を修行することにより、世界平和、息災延命、災厄消除、交通安全、身上安全等を祈念するものです。
近年では、海外でFire-Waiking Fesivalという名前で知られるようになり、観光客5000人以上にのぼるなど、燃え盛る焔と勇壮な儀式が圧巻の関東屈指の大祈祷法要です。
儀式の流れ
火渡り祭りの儀式は、どうしても大きく燃え盛る火の印象が強いのですが、火が点けられるまでに約1時間ほど、読経や刀で魔を断ちきったり、矢を放ち道場内を浄め、熱湯で身を清めたりするなどの儀式が行われます。
午後1時から始まるほら貝の音色に導かれて行者たちがやってくると、修法する導師を本座へ案内する「大導師招待(だいどうししょうたい)」、金剛の智慧(ちえ)の火により行者の不浄を焼きつくす「火切加持(ひきりかじ)」、信徒各位の願い事を本尊に述べる「願文(がんもん)」などさまざまな儀式が執り行われます。
そして、その火を入れる「護摩焚き」、緊張感が漂う中、修験道者が火を入れ、周囲が一瞬で煙で何も見えなくなるほどになります。
その後、こんもりと積み上げられた檜の葉に着火。
点火が始まると、あっという間に大きく高さのある強力な炎と煙が勢いよく立ち昇ります。少し離れた場所でもその炎の温度は感じられるくらいです。行者たちはそのかたわらで、熱湯で身心を清める「湯加持(ゆかじ)」を行います。
そして2時近くになると、神輿を担いで周囲を回る儀式、「梵天払い」が始まります。
「梵天札」は、火渡り祭の際に御輿に差し、御護摩の周りを祈祷しながら担ぎ歩いたものです。
「火伏の御札」として火を扱う場所に祀ると良いとされ、家内安全・火伏せの御利益があるといわれる人気の御札で一体500円で授かることができます。
そうしたいくつもの行程を経て、火渡りの修行「火生三昧(かしょうさんまい)」が行われます。
20分ほど燃えると火渡りの道が作られていきます。
水をかけたり灰をかき分けたりで、人が歩ける限界まで調整されます。
8メートル四方ほどの御護摩の炉の炎の道は温度の調整をされたとはいえ、普通の人ではとても歩けないくらいまだまだ高温の状態。熱い燠火(おきび)が四方に散らばる中を、「おんばろだやそわか~」と唱えながら修行を積んだ山伏は最初に打ち水をして塩で清浄払い(しょうじょうはらい)を素足で歩いていきます。
修験道者の修行が終わった後に一般の方も火渡りの行に参加出来る「御信徒火渡り」があります。(火渡りに参加する場合は「渡火証」を購入することになります(¥300))
実は一般の方が参加できるようになったのは、昭和30年以降から高尾山薬王院の先代貫主により「多くの人に一緒に祈願をしてほしい」ということで始められました。
阿字門
火道場の入口。大宇宙を凝縮した真理の世界である道場の開門の作法
大導師招待
大導師を、本座へと案内する作法。
火切加持
金剛の智慧(ちえ)の火により、道場内及び行者の不浄を焼き尽くす作法。
床堅
凡身即仏(ぼんしんそくぶつ)の行儀。行者の肉身即ち大日如来であると観ずる作法。
神斧
柴燈護摩(さいとうごま)の檀木(だんぎ)の木を切り出す作法。
寶剣
道場内の魔、そして自心の魔を断ち切る作法。
寶弓
四方の外魔を、道場内に入り込ませない作法。
願文
御信徒各位の願い事を、本尊に述べる願い文。
閼伽・点火
釈迦如来(しゃかにょらい)の心水。これを本尊に供えた後に、中央に積まれた檜の葉に点火。
散華・梵天祓い
本尊に供養の華を散き、仏法の守護神である梵天の大威力(だいいりき)により、身口意(しんくい)の三密を清浄。
湯加持
大釜で湯を沸かし、水天(すいてん)と同体となった行者が、熱湯で身心を清める作法。
火生三昧表白
本日の火生三昧の趣旨を、本尊に啓白する。
清浄払い
火渡りに備え、再度、魔を振りはらう作法。
火生三昧
鎮火した頃。不動尊の力を体得し、火を統御し得る存在となった修験者が、素足で火の上を渡る。悪魔、煩悩、怨敵を降伏し、安穏解脱を得る修行。火を渡ることにより、除災を行ない、人々の不安や悩みの除去の意も。
御信徒火渡り
己の煩悩や汚れを、焼き尽くす意ある儀式。
御信徒火渡りについて
先に修験道者が渡り終わったあとなので火の勢い、熱気も更に優しくはなっていますが、それでも「熱さが苦手、怖い」という方はできるだけ後ろのほうに並んでおきましょう。
火傷するような可能性はまずありませんが、それでも熱い地面を裸足で歩くことに変わりはありませんので、無理はしないのが得策です。
高尾山の火渡り祭の時間と会場へ行くタイミング
会場へ到着する望ましい時刻は、火渡り祭を見物するだけか、あるいは御信徒火渡りにも参加するのかで変わってきます。
見物するだけの方
火渡り祭開始時間は午後1時ですが、前述したような火渡りの会場へ山伏や
白装束の行者たちが入場してくるのはおおよそ12時40分頃からとなります。そこから閼伽・点火まで様々な儀式が繰り広げられます。
ただし、これらの儀式は、走り回ったり過度なアクションがあるわけでなく、ゆったりと行われていきますので、おそらく多くに人が(こう言っては失礼でしょうが)退屈な時間となるかもしれません。
従って、儀式のすべてを一度は見たいというのであれば、場所取りも含めて11時頃には会場に行ったほうがよいでしょう。
一方、盛り上がりのポイントだけ、後ろから立ち見でもいいという人は、1時頃を目指しても大丈夫でしょう。
御信徒火渡りにも参加したい人
一方、火渡りに参加しようと考えている人は、1時に行ったのでは間に合いません。
火渡りの希望者は毎年1000人以上という大人数です。
実際のところ朝10時頃には会場入りをして並び始める方も多くいます。
12時半頃にはおそらく1000人程度に長蛇の列となっています。
1時に行ったのでは大行列の最後尾となる可能性があります。
そうなると火渡りの順番を待つだけでもおそらく1時間ほどもかかってしまいます。
参加したいという場合は出来るだけ早く、11時頃には到着するようにしておきましょう。
火渡り会場とアクセス
会場は、山麓祈祷殿駐車場です。
一番近い駅は京王線高尾山口駅で、JRを利用する場合には、中央線の高尾駅で京王線に乗り換えて次の駅となります。
駅からでて国道20号線(甲州街道)に出て会場へは歩いて5分ほどで着けます。火渡り祭当日には駅から案内板がたくさん掲示してありますので迷うことはないでしょう。
車利用の場合、高尾山薬王院の最寄りのインターは首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の高尾山インターで、インターからは5分もかからず祈祷殿駐車場に着きます。
しかし、通常250台が収容できる祈祷殿駐車場自体が火渡り祭の開催日には会場となるために駐車場としては利用できません。もちろん会場近くには八王子市営高尾山麓駐車場や京王高尾山駐車場など他の駐車場もあるのですが、当然すぐに満車となってしまいますので、空きを待っていたら火渡り祭が終わってましたでは、あまりにも残念です。
どうしても車という方は、かなり早く出かけるか高尾駅周辺の駐車場に停めて京王線で隣の高尾山口駅に向かったほうがいいでしょう。
火渡り祭に行かれる方はなるべく公共交通機関をご利用ください。
火渡り祭での服装など
火渡り祭で点火とともにもうもうとした煙が一面にたちはじめ、煙で何も見えなくなるほどで、刺激が強いために煙で目が痛くなったり、咳が出ることもあります。
煙が来るたびにごほん、ごほんと皆さんがせき込み始めます。風が強い場合は特に風下はさけ、風上に場所取りをポジションを取ることをおすすめします。
そんな状況です方煙の匂いは衣服につくものと思って、おしゃれな服はさけたほうがよいでしょう(焼肉屋、炭火炉端焼きにお店にでもでかけるつもりでおいでください)
また、勢いよく燃える護摩焚きの火は想像以上で、風が強くて火勢がすごいときなどは警備の方が避難させることもあるほどで、見学の場所が近い際には、火の粉で服を焦がさないように注意してください。
なお、御信徒火渡りに参加する方は、また別の注意が必要です。
というのも火渡りする際、自分の靴や荷物はすべて手で持って火を渡ります。
このため毎年、バッグや上着を火渡りの道に落としてしまう人が何人もいます。
鎮火後ですのでいきなり燃えるということはないでしょうが、無傷ではおられませんよね。
できれば、荷物はリュックなどにまとめて収めてしっかりと背負うような形がいいでしょうね。
また、御信徒火渡り頃には、道も落ち着いており火傷の心配はないそうですが、足が汚れるので、ウェットティッシュや足をふくための濡れタオルを持参しましょう。
また履物をその場で脱いでから渡りますから、女性の場合ストッキングやタイツをはいていると大変ですので、避けてください。
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