高尾山の自然観察ガイド

高尾山の自然

　東京都、新宿駅から約1時間でいけるというアクセスの良さが魅力の「高尾山」。登山初心者でも気軽に登ることができる高尾山は、四季折々の自然豊かな景色を都内で楽しめると人気の観光スポットです。
　高尾山は東京の多摩地域南部にある標高599mの山で、広葉樹や樹齢数百年の大杉など広大な自然林が残っています。

　この自然に育まれた高尾山の周辺に生息する植物は153科1,300種類に及び、高尾山特有の植物の数は65種類といわれ、ムササビやタヌキなどの動物たちも数多く生息しており、数多くの野鳥を確認することもできるエリアです。

　また、昆虫の種類も多く、約５０００種に達していると言われています。このため大阪の箕面山、京都の貴船山ともに、日本の昆虫の三大生息地として知られてきました。

　山全体が高尾山薬王院を中心に古くから山岳信仰の対象とされ、周辺の樹林は社寺林、御料林として保護されてきており、現在でも全域が自然公園の特別地域であるため豊かな自然の美しさを残すことができたのです。

　年間約260万人もの登山者が訪れる高尾山ですが、その中には外国人の数も少なくありません。都心から近いというアクセスにもかかわらず、自然がたくさんあるというのが外国人に人気の理由のひとつでしょう。特に2007年にミシュランガイドで、高尾山が富士山と並んで三つ星を獲得して以降、大勢の外国の方を見かけるようになりました。

　それでは、動植物の宝庫である高尾山の自然についてご紹介します。

高尾山では、様々な動植物が出迎えてくれます

高尾山の草花

高尾山には約1,600種の植物の種類が確認されており、これはイギリス全土で自生する種類とほぼ同数といわれています。ヤマルリソウが春の訪れを告げると花々が咲き乱れます。 可愛くて大人気のハナネコノメやニリンソウ、気品あるアズマイチゲ、そしてたくさんのすみれなどなど。 絶景とかわいらしい草花、珍しい草花にも会える高尾山。そのため、多くの人が花を観察、撮影するために高尾山に訪れます。

高尾山の樹木

標高と地理的な条件から、高尾山はスギなどの針葉樹やカシ、シイといった常緑広葉樹を中心に多種多様の樹林を見ることができますが、深山の象徴であるブナも生育しているというのは驚きでしょう。また、特筆すべきことは、高尾山自然研究路１号路の尾根を挟んで南斜面には、カシ類などを主体とした暖帯林が続き、北側斜面にはイヌブナなどの落葉樹を主体とした温帯林が広がっていることです。

高尾山のスミレ

高尾山の春の主役といえばスミレの花。変化に富んだ豊かな自然環境が広がる高尾山では、春はあちこちでスミレの花に出会います。小さくて踏んでしまいそうなスミレは雑草の陰や岩の間で咲いています。日本には約８０種類のスミレが自生していますが、高尾山ではそのうち約３０種類のスミレが観察され、交雑種などを含めると５０種類ほどにもなるそうです。高尾山でしか見られない「タカオスミレ」を探し歩くというのも面白いかもしれません。

高尾山の動物たち

高尾山は、スギやヒノキなどの人工林だけでなく、カシやブナなどの自然林が広く残っています。そして、この豊かな自然には様々な動物が暮らしています。高尾山の人気者、クリッとした丸い眼、木の実をかじる頑丈で鋭い切歯、ふわりとした尾をもつリスは、とても愛嬌があります。可愛くて人気者の動物から、あまり出会いたくない動物まで紹介しましょう。

高尾山の鳥類

暖温帯常緑広葉樹林から冷温帯落葉広葉樹林まで多様性に富んだ環境で野鳥が多いのも高尾山の特徴。野鳥は夏鳥、冬鳥、留鳥など、季節によって見られる種類が違いますが、その数は150種類で、日本で確認されている野鳥が550種類ですから、その30％以上が高尾山で見ることができるわけです。春はカラ類や夏鳥のオオルリ、キビタキの囀り。６月頃はホトトギス。サンコウチョウやツツドリの声も聞かれる事があります。

高尾山の両生類

４月も半ばを過ぎると、高尾山の麓を流れる小仏川の清流から美しい鳴き声が聞こえてくる。まるで虫の音のようだが、この声の持ち主は地味な外見に反して綺麗な鳴き声が特徴的なカジカガエルです。また、明治時代の著名な両生類学者である田子勝弥氏にちなんでいるタゴガエルなど高尾山は両生類にとっても楽園だったのですね。

高尾山の虫たち（昆虫）

高尾山の秋は虫達の音楽会です。その中でも「幻の虫」とか「鳴く虫の帝王」とか呼ばれているのが「カンタン」で８月中旬から１１月上旬まで美しい鳴き声が聞こえます。高尾山は箕面山（大阪）、貴船山（京都）とならび、数千種の昆虫が生息する三大昆虫生息地としても知られていますが、ここで初めて発見された昆虫がいることからも、いかに豊かな生態系をもった山かがよくわかります。

高尾山の自然を楽しめる名所をご紹介します

花の名所

裏高尾町はの旧甲州街道沿いの地域は「高尾梅郷」の名で梅の名所として知られています。川沿いのハイキングを楽しみながら民家の梅や梅林を梅林を鑑賞できます。その中でも最も規模の大きい梅林として人気を集めるのが「木下沢梅林」。園内には約1400本の梅が植えられていて、花の盛りの景観はまさに圧巻です。

サクラの名所

４月中旬から下旬にかけて高尾山頂から陣馬山、相模湖方面へのハイキングコースの途中にある小仏城山までの一丁平では約２キロにわたり約７００本が咲きます。一般に、高尾山のサクラは都心よりも１～２週間ほど開花が遅れ麓から上へ上へと移ります。街での桜のシーズンが終わったあと、追いかけるように花を一斉に開かせて、山の斜面を染めるのです。

紅葉の名所

高尾山は、東京都内では数少ない紅葉の名所。江戸時代からの古い照葉樹林やブナなどの木々が保護されており、紅葉シーズン中は木々がじゅうたんのように広がります。モミジ(カエデ)もありますが、ブナやイヌブナなど自然林としてあるためやまぶき色にもなります。高尾山 紅葉の見頃は気候や天候にもよりますが、毎年11月の中旬から12月の上旬になります。

いろはの森

高尾山頂から日影沢に下る自然研究路の４号路には「いろはの森」があります。他の遊歩道と違って趣向が凝らしてあります。ケヤキやモミやヒノキなどいろはの森遊歩道沿いに「いろは４８文字」のそれぞれから文字を頭にもつ樹木が植えてあります。また、和歌を書いた木製の掲示板が点々と上まで立てられています。

高尾山の自然をさらに楽しみましょう

高尾の地学

高尾山をはじめとする周辺の山々は、１億年ほど昔は海底であったと考えられており、この海底に、およそ７０００年前～１億年前の間を通して、地層が堆積しました。高尾山の地層は「互層」と呼ばれ、砂岩と頁岩（粘板岩）が定間隔で「交互に堆積した」構造をなしている。 又、高尾の地層は傾斜角70～80°、海底に自然に堆積された地層が隆起したなら、地層も規則正しく水平に見える筈ですが、立ち上がり垂直の地層となっているのです。膨大な地球のパワーを感じます。

高尾山と花粉症

高尾山と言えば「杉林」を思い浮かべる方も多いのではありませんか。あれっ、と言うことは．．高尾山はスギ花粉の生産地でもあったのですね。そんな花粉のメッカ、高尾山に春に登られる方は、覚悟とマスクをお忘れなく。

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